作品情報:拷問トーナメント
基本情報
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書籍名 | 拷問トーナメント |
著者 | 高遠由子 |
原作 | – |
原作者 | アオイセイ |
キャラデザ | – |
ページ数 | 1巻:194ページ 2巻:178ページ 3巻:178ページ 4巻:178ページ |
発売日 | 1巻:2017年09月21日 2巻:2018年01月19日 3巻:2018年06月22日 4巻:2018年11月21日 |
出版社 | 双葉社 |
レーベル | アクションコミックス |
ASIN | 1巻:B075SXWCN2 2巻:B0792VSR2R 3巻:B07D2BMVVZ 4巻:B07HHV6V9R |
ISBN | 1巻:978-4575850345 2巻:978-4575850963 3巻:978-4575851717 4巻:978-4575852325 |
状態 | 完結(打ち切り) |
巻数 | 全4巻 |
あらすじ
高校生の主人公・太田俊輔は、駅で自分とそっくりな人間の自殺を目の当たりにした。
翌日、俊輔は拉致され目が覚めると、そこは檻の中――。
対象者に早く秘密を吐かせるかを競う”拷問トーナメント”の会場だった。
自殺した「拷問吏」の代わりとして、俊輔はトーナメントに参加する。
感想:拷問トーナメント
感想
着想は面白いです。
拷問は「拷問する側」と「拷問される側」の対比で成立しますが、そこにトーナメント=競い合いという要素は目新しさを感じました。
読み始めのドッペルゲンガー君で、「この必要性、必然性はなんだろう?」と思いつつ読み進めるも、ストーリーも絵も振り切っていない感じが否めません。
この作品が打ち切りにならず、長く続いたならこの伏線も回収されたかもしれませんね。
ただ、後述するとおりミスリードが少しお粗末なので、あまり期待はできなかったかな。
1戦目の後で森村との関係性が大きく変わっているように見えるし、弁当持って何しに来たの? とか、ちぐはぐしてる。
更には森村&先生の時はミスリードがミスリードになっていない感じ。
浮気相手が森村――って、そっちよりも先に出てきた母親の話がインパクト強くてこっちが本命でしょ。と感じたのは私だけではないはず。
ようやく、話が大きく動くかな? と言ったところで、打ち切り完結。
う~む。
梅原が実は黒幕とかさ、主人公の母親が実は亡くなっていてドッペルゲンガーは双子だったとかさ、もっとぶっ飛んでドッペルゲンガーが自分のクローンとかさ、いろいろ出来そうな下地のある作品なので、ちょっと残念。
拷問なの? トーナメントなの?
本記事のタイトルに、「拷問なの? トーナメントなの?」と書いた点について、まとめておきます。
そもそも拷問とは?
拷問は、精神的や肉体的な苦痛を用いて自白を強要すること。またはその苦痛行為。
自白は、自身の秘密や自身の犯した罪を包み隠さず言うこと。
本作は拷問なの?
私の解釈はNoです。理由は2つ。
1つ目に、甘い嘘や優しい言葉も時には拷問になり得るといった表現が用いられているが、それは拷問じゃなくて「自白を引き出す手法の1つ」というだけではないでしょうか?
甘い嘘を契機に精神的苦痛を与えるなら、まだ分かるんだけど、本作での位置づけがちょっと、ねぇ?
2つ目に、自白するのは「自身の秘密・罪」であることに対して、無関係の人間が対象になっている点。それは拷問じゃなくて、ただの暴力でしょ。そもそも、「拷問トーナメントが無関係のものに知られたら……」というくだりがあるのに、主催者側が無関係な人間を巻き込むのはお粗末です。
余談として、拷問を受ける人を「容疑者」ではなく「被験者」って呼んでるのも気にかかりました。
結局、本作は何がやりたかったんでしょう?
ただ、痛めつける描写が受けるから描かれたのかなと勘ぐってしまいます。
これは『トーナメント』なの?
答えはYesとも言えるしNoとも言える。(Noが優勢)
一般的に日本では「トーナメント」と言えば、「シングルエリミネーショントーナメント(1回負けたら終了の勝ち抜きトーナメント)」を指すと思っているのです。
一方で、この作品。
勝ち負けの○と×が並ぶ上に、負けても次があることを匂わせるセリフもあり、前述の意味するトーナメントには合致しません。
国際的な意味合いでの「トーナメント=選手権」であれば意味合いが成立するが、それであれば主人公がそっくりさんだから代わりに出場という、びっくり展開に説明がつかない。
なぜなら、選手権とは「選び抜かれた人が出る大会で、そのタイトルにおける最強を決めること」だからです。
出場者も被験者も場所も、日本人で日本という狭い範囲に絞っているから余計に「トーナメント」と言う言葉が悪目立ちしているように感じてしまった。
大ヒットのポテンシャルを秘めている
私は下記の5点があれば、大ヒットしていたかもしれないと思っています。
- もっとテンポをよくする
- 伏線、ちぐはぐを意識する
- タイトルを変更する
- 過去の拷問器具を出す
- 絵をアニメ寄りからリアル寄りに変更
テンポはそこまで悪くなかったけど、日常シーンはもっと削って良いかなと思った。
この作品に求めていたのは、「日常と拷問(非日常)の対比」ではなくて、「真っ黒な拷問の世界」でした。
ちぐはぐを意識は言わずもがなですね。
打ち切りのせいで回収できなかっただけかもしれないけれど、この手の作品は伏線があった方が飛躍的に面白くなりますからね。
なぜ、「その秘密を隠しているのか?」「拷問されても言えない秘密なのか?」という深堀が足りていないと、「えー、私なら命が大事だし、痛いの嫌だから、その程度の事なら秘密明かすわ~。」となり、一気に興醒めしてしまいます……。
タイトルから拷問じゃないじゃん。トーナメントじゃないじゃん。
となると、それだけで評価が下がる可能性があります。
「拷問」という言葉の強さから、それに作品が答えられないと低評価は仕方ない気もします。
だったら、いっそ別のタイトルにしても良かったかもしれませんね。
※もしかしたら、タイトルで釣られて初動は良かったかもしれないけれど、内容的に低評価が増えて続巻からは芳しくなく4巻打ち切りになったのかな?
もしもタイトルに「拷問」を使うなら、過去の拷問道具を出してほしかった。
アイアンメイデンとか、ファラリスの雄牛とかね。(いや、処刑道具か。)
最後に、作品があまりにアニメに寄った絵であること。
もっとリアルに寄せた絵だったら、結果は違ったかもしれない。
※単純に「グロテスク」を求めた読者は絵の時点で離れた可能性があります。
着想以外をもろもろ否定しているような感じになって、ごめんなさい。
結び
1戦目から「お金のために――」って話だったけど、
1戦目の終わりで、莫大な賞金もらえるのが分かった時点で、2戦目以降は拷問しなくてもお金で落とせることは明白。
「あれ、これ拷問しなくても成立するんじゃない?」と思ってしまった。
しかし、主人公がお金も使わず拷問も止めないのは何なんだろうね~。
それも回収しきれなかった、一つの伏線だと面白いのにな。
そこまで考えられた作品って印象が持てなかったのが残念。