『エスケープ・ルーム』をギリシャ神話を交えて考察してみる

目次

作品情報:エスケープ・ルーム

基本情報

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題名エスケープ・ルーム
原題ESCAPE ROOM
原案ブラギ・シャット
監督アダム・ロビテル
脚本ブラギ・シャット
マリア・メルニック
製作ニール・H・モリッツ
音楽ブライアン・タイラー
ジョン・ケアリー
撮影マーク・スパイサー
編集スティーヴ・ミルコヴィッチ
配給会社ソニー・ピクチャーズ・リリーシング
東京テアトル
製作会社コロンビア ピクチャーズ
オリジナル・フィルム
製作国アメリカ合衆国
公開日2020年02月28日
作品時間99分
出演者テイラー・ラッセル
ローガン・ミラー
ジェイ・エリス
タイラー・ラビーン
デボラ・アン・ウォール
ニック・ドダーニ
ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
コーネリアス・ギーニーJr.
ラッセル・クロース
バート・フーシュ
ジェシカ・サットン
ポール・ハンプシャー
ヴェレ・ティンダル
ケネス・フォク
ケ―リー・ジョー・レヴィ
ジェイミー・リー・マネー
ジェレミー・ボアド
インゲ・ベックマン
カール・クッツェー
キャサリン・グリフィス
ゲイリー・グリーン
レイヴン・スワート
ダン・グルエンバーグ
ジノ・リー
アレックス・マルティネス
レベッカ・リーディ
アダム・ロビテル
ピート・セペヌク
マリオ・タルドン
アルフレド・タバレス

あらすじ

脱出ゲームの招待状が届いた。
脱出できれば賞金1万ドル。参加したのは男女6人。

集められた6人の関係性はあるのか。そして誰が生存するのか――。

感想と考察:エスケープ・ルーム

感想

初っ端はド派手に死ぬのが、この手の映画のお約束――。
数字の謎が解けないと慌てふためきつつも、「迫りくる壁と扉の間に、折れてきた柱や家具を挟んで『扉を壊す』ことで次に抜けられるのでは?」とか、「暖炉の火を消せば、回避スペースになるのでは?」とか色々な思考が巡りました。

しかし、生死が分からないままに話は3日前に戻ります。
あー、これがエンディングのキーになるのねと少しガッカリ。
だって、このキャラクターは100%最後まで生き残るという保証だからね……。

この3日前にて、登場人物(数人)の前日譚を描いていきます。
そのカラクリ箱との格闘シーンは、本当に必要?
尺が長いよ。その後の伏線にもなっていないよね?
そして出てきた紙には、「脱出賞金は1万ドル(約130万円)」の記述。
うーん。規模が小さい。桁が少ない。
(私の価値観がバグっていますね。。。)

それと話が変わるんですが冒頭10分くらいかな? ゾーイの友人の喋り方が、『ジョジョの奇妙な冒険』のソレに聞こえて意識が持っていかれました!

私がググらないと思って、適当に言葉を作ったりしてるんじゃあ無いよね?

引用元:エスケープ・ルーム

そして、いよいよ6人が集結します。

ダニーの発言では「5部屋」とありましたね。
これはあくまでベテランゲーマーの予想でありミスリードの可能性もありますが「1人1部屋で蹴落としていくイメージ」かな? と思ったら、意外に生き延びていく面々。

少し期待が高まってきます!

ダニーだけスマホ持ってるし、気に障る発言多いから死んでくれないかな~。
と思いつつも、本作の登場人物が全体的にダメダメ……。
冷静さを失うのは良いにしても、情緒不安定が過ぎる。
それに「お前が言うな!」というケースが多すぎよ!
「もう黙れ」って言うキャラクターが「黙っとけよ」と思ったし、「静かにしてよ」って言うキャラクターが「静かにしてくれ」って思った。

各部屋ごとに感じたことは後述していますので、ここでは全体ついて書きます。
十分に楽しめますが、もう1度観たくなる作品ではないです。
前述のキャラクターたちの、ダメダメ(イライラ)ポイントが溜まりすぎていて、「もうええわ」状態です。

そして、本作のストーリーは予想を超えてきません。
『SAW』のような、どんでん返しを期待していると肩透かしが甚だしい。
なので、淡々と部屋を進んでいく。運が悪けりゃ脱落するぜ? くらいの前情報で観るのがオススメですね。
「エスケープ・ルーム?」「6人で命を懸けた脱出ゲーム?」とハードルが上がると、評価は下がっていきますね

しかし、本作は考察すると一気に面白くなります。
特に「ギリシャ神話」との関係性を考えると面白いですよ!
(考察は下の方に書いてます。ネタバレ前提なのでご注意ください。)

エログロ要素が少ないため、年齢層を低めに設定したパニック映画という印象でした。
本作のエンディングは続編を意識した形になっており、実際に『エスケープ・ルーム2:決勝戦』が製作・公開されたようです。
※未視聴ですのでストーリーが繋がっているのか? などは知らないです。

各部屋ごとの感想

1部屋目:待合室

細かい所に気がつくことが出来るか? という運。

「あなたに選ばれたい」と「コースターを使え」で謎は解けましたね。
ソファー動かせるならソファーを乗せるのもありだろうし、マグカップとかの周りのモノで代用できるものがあったんじゃないのかな?

2部屋目:小屋

事前知識を持っているか? という運。

「赤鼻のトナカイ」の英語版歌詞を知っていれば、「歴史に名を残す」でピンとくるのでしょう。知らなくてもトナカイの骨と、刻印されたイニシャルで謎は解けますね。

ちょうど、年末のクリスマスシーズンにこの映画を観たので、別件でトナカイ等を調べていたのがラッキーでした。
これこそ、まさに幸運!

でも、アメリカだとトナカイの名前を憶えているもんなのかな?
知らない方のために、サンタクロースのソリを引くトナカイの一覧を載せておきます。

No.英語名日本語名
1Rudolphルドルフ
2Dasherダッシャー
3Dancerダンサー
4Prancerプランサー
5Vixenヴィクセン
6Donderドンダー
7Blitzenブリッツェン
8Cupidキューピッド
9Cometコメット

3部屋目:もはや屋外

細かい所に気がつくことが出来るか? 地雷回避できるか? という運。

「動物たち」に注目して、「釣り道具」「コンパス→おもり」は順当。
問題となるのは、その後に出てきた<氷塊>です。

実は溶かすための道具があったんじゃないの? というのが1つ思ったこと。
だって、みんなで温めよう! って運もへったくれもない上にユーザは観ていて楽しいの? という疑問が著しい。
「地雷原の中でどこかに隠してあって、運が良ければ見つけられる。」と考える方が自然だと思った。

それに「氷=溶かす」の発想に縛られてるけど、小屋に投げつけて割る方が早くない?

万が一に小屋の鍵が壊れたなら「小屋の中で暖を取る」ことができるし、鍵が絶対の強度を誇るならば「氷は割れる」はずですよね?
そんな思考にもたどり着かないほどに、「寒さ(低体温症)は怖い」という表現だったのかな……。

4部屋目:ビリヤード場

知恵・運動能力を有しているか? という運。

スライドパズルって、完成像が頭に浮かんでないと解けないでしょ。だったら、わざわざ組み立てなくても良くない? だって、組み立てたことが「鍵」になって、何かが作動するわけじゃなかったじゃん。
でも、それは結果論だから解くしかなかったのか……。

部屋が上下逆さまだから、「数字を逆から入力」は安直が過ぎる。
数字を上下逆さまして、6→9とかの方が自然だと感じたんだけど……。

部屋にあるものが、すべて鏡映しになっている。
ならば、「数字を逆から入力」という思考が適切だと思いました。

5部屋目:病室

肉体的限界に耐えられるか? という運。

なにのんびり昔話してんの? 舐めてんの?
と言いつつも、キャラクターたちのバックボーン紹介であり、「この作品・この部屋」の目的紹介であるため必要でしょうね。

手話は無理だ。分からないよ!
これは流石に解けなかった。

一方でその後の心電図よ。
何も分からぬままに「あげろ~」「さげろ~」は滑稽すぎるだろうよ。
マイクが1度犠牲になった時点で、逆を試せよ。
そもそも、「限界に挑戦」がなんで心拍急上昇なのよ?
普通はフラットライン(心停止)に近い方が“限界”に近いだろうよ!
ジェイソンが無能な上に、声がでかくて嫌いだわ。

それと「有毒ガスが出る」と思ったら窒息なの?
そこはどっちえも良いか~。
(もしかしたら一酸化炭素中毒=窒息って訳しているのかな? 文字量的に絞った表現にしている可能性もあるから一概に何とも言えない。)

マイクに電気ショックして助けてやれよ~。
そもそも、電気ショック受けるのはジェイソンで良かったろうが!
何リーダー面してんだ?

と、イライラが溜まる。溜まる。
ワタシ、ジェイソン、キライ!

6部屋目:白黒の部屋

ノーヒントで解毒薬を見つけ出せるか? という運。

一人の力では開けられない扉に、解毒薬は1個だけ。
本当に1個しかなかったのか? という点は微妙ですが、運を比べることが目的なので、1個と考えて良いでしょう。

元々の本作の目的からすれば、こういう部屋が連続するのがあるべき姿。
(面白いかどうかは別問題だけど……。)

7部屋目:最後の部屋

細かい所に気がつくことが出来るか? という運。

ここにきて謎解きを放棄して、まさかの解決策!
それで良いんだ。それで良いんだよ! ベン!

命が掛かってるんだから、斜め上の発想で切り抜けようぜ! と高評価です!

脱出

ゾーイについて、ガスが充満するなかで酸素マスクを着けて逃げ切った。というのは好ポイント! そこから先、死体しかないはずだから油断してるとか、稼働し終わったトラップだから女性1人でも進めるのねと納得できる展開で良かったです。

ゲームマスターの対峙は、あっさり過ぎてなんとも……。
ただ、その後の展開や次作へ繋げる流れも綺麗だった。

その他:各部屋について

“運”って、関係あったか? というのが率直な印象。
各部屋が、登場人物の過去に沿った要素で構成されているのは言わずもがなですが、それに囚われすぎてトラップというか「運という要素」が、おざなりになっているのが残念ポイント。

上にざーっくり「~ という運」って書いたけど、それらの情報は下調べした上でゲームが開催されているからね。
(こいつは元軍人で体力があるとか、こいつは手話が分かるぞ――とかね?)

そもそも、ゲームに参加しないという選択肢を取られたら、ゲーム自体が成り立たない訳で、それこそ「ゲーム運営側の運」が試されてる。

それでも、擁護するとしたら……。

ルドルフの名を知らないという事は無いにしても、手話知らない人間は多くないか?
そんな知らない人間だけが取り残されたら完全に詰み

それらを“運”と捉えれば、本作は少しだけ納得できるかな――。

考察

部屋に集められたメンバと部屋の目的

本作の中で描かれているとおり、登場人物は過去の事故の生存者が集められている。
そのメンバが「幸運比べ(誰が一番幸運なのか?)」をさせられるのが、本部屋の目的。

しかし、部屋の趣旨が「運」とかけ離れているものが多いことが残念。
ミノス社に目を付けられた時点で、そもそも運が無いという事実も含めて……。

最初(最後)の部屋で扉が開なかった理由

考え方自体は合っていたでしょう。
作中のヒントがそれしかないので……。

では、なぜ開かなかった?

それは、数字の位置が絵画の位置と違うからですね。
鏡映しの配置にする必要があるのかな? と思って見直したら、普通に配置ミスってましたね。
そりゃ、壁が迫ってきたら焦るでしょうよ……。

<絵画の配置>
 8
 6

<扉で設定した配置>
 8
 6

会社名「ミノス」の意味と「ゾーイ」との関係性

会社名はギリシャ神話の「ミノス」が由来だと思います。

ギリシャ神話の中での「ミノス」は、「ダイダロス」に迷宮作らせて、その中に「ミノタウロス」を閉じ込めた人です。
じゃあ、本作の主人公であるゾーイはアリアドネ? など、考察を深めると面白いポイントです!

一番簡単な考えでは、「ミノス=迷宮に閉じ込めるもの」という意味合い。
主人公たちを、迷宮(=エスケープ・ルーム)に閉じ込める存在だったというものですね。

そこから更に考察するならば、「ゾーイ=アリアドネ説」です。

「ミノス」はギリシャ神話では王様であり、冥界の審判官です。
そして「アリアドネ」は、「ミノスの娘」にあたります。

ゾーイの父親がミノスの社長(王)だったら、「ゾーイ=アリアドネってことね」となりますね。本作の中で、ゾーイは「母とベトナム旅行中に飛行機事故」と発言しており、父の存在が語られていないのもポイントです。

更にはあの最後のセリフもあるからね。明らかに意識してるよね?

↓ 吹替え版だとこのようなセリフです。

ゾーイが飛行機恐怖症を乗り越えたみたいでよかったよ。
プレイ再開だ。

引用元:エスケープ・ルーム

しかし、字幕版だと少し印象が違います。

「また遊べる」という訳になっているので、「何かを示唆している」可能性もありますね。
うん。面白い!

ゾーイが飛行機恐怖症から立ち直ってよかったよ。
また遊べる。

引用元:エスケープ・ルーム

ゲームマスターがゲームに参加した(させられた)理由

ゲームマスターはあくまで、このゲームを管理する人。
他の業種でもそうですが、企画する人、開発する人、テストする人、営業する人など様々な役割がある中で「管理する人」という立ち位置になっています。

この管理する人を、更に管理する立場があるように考える。
上司なのか、あるいは支店統括部みたいなものかもしれない。
そして、「ゲームマスターを強制参加した方が盛り上がる(ユーザの期待に応えられる)」という判断から、強制参加させられることになった。
と考えるのが収まりある見解かな~。

さすがに、「ゲームマスター=ミノタウロス」と考えるのは少し根拠が乏しいよね。
実はゲームマスターも「ミノスの被害者の一人(生存者の一人)」で、無理やりゲームを管理する立場に置かれているとすると「ゲームマスター=ミノタウロス」と考えることもできる。
でも、そうなるとトドメを刺した「ベン=テセウス」になり、脱出を手助けした「ゾーイ=アリアドネ」の説が深まります……。

ギリシャ神話では、「アリアドネから受け取った短剣で、テセウスがミノタウロスにトドメを刺します」が、本作では「ゾーイから受け取った拳銃にて、ベンがゲームマスターにトドメを刺す」のです。

似てますね。

では、ギリシャ神話では、「アリアドネとテセウスは、その後どうなったのか?」が気になりますよね。

諸説あるのですが、1つ言えることは「テセウスは“アリアドネを置き去りにした”という事」です。

あれ? 次作でベンはゾーイを置き去りにするのかな?
(そうなると、めちゃめちゃ面白いんだけど!)

英語メモ

We know you have a choise.

最初の部屋のマグカップに書いてあった言葉。意味は「あなたに選ばれたい」。

SINGE

最初の部屋の本に書いてあった言葉。意味は「(~を)焦がす」。

FAHRENHEIT 451

最初の部屋の本に書いてあった言葉。意味は「華氏451度」。
ちなみに華氏の単位は「」であり、「451℉」は摂氏で「約233℃」です。

DR.WOOTAN YU SAYS PLEASE USE THE COASTERS AT ALL TIMES.

最初の部屋で壁に書かれた言葉。意味は「コースターを使え」。
直訳すると「コースターを使ってくださいとウータン・ユウ博士が言った。」

THE BALL POOL ROOM

第4の部屋の看板。意味は「ビリヤード場」。

Feel free to Leave but may we note it’s best to find the antidote.

第6の部屋の出口に書かれた言葉。意味は「出口はこちら。でも、解毒剤を探すことを進めます。」

ANTIDOTE ONE DOSE Inject into muscle.

第6の部屋で見つけた薬のラベル。意味は「解毒剤 1人分」。
直訳では「解毒剤 1回投与量 筋肉に注射する」となる。

ACTA EST FABULA

最後の部屋に書かれた言葉。ラテン語で意味は「物語の終点」。
「芝居は終わった。」という意味もある。

NO WAY OUT

脱出後に残された言葉。意味は「出口は無い」。

I FLY WITHOUT WINGS… I CRY WITHOUT EYES…

最後に登場する問題。吹替え版だと「翼無くして飛び、目無くして泣く」で、字幕版だと「翼がないのに飛び、目がないのに泣くもの」という意味で表現されています。

「なぞなぞ」ですね――。

翼は無いけれど、ぷかぷかと空に浮かんでいる。
目は無いけれど、雨という名の涙を流す。
そのため、答えは「雲(CLOUD)」となっています。

結び

本作では、『ベスト・キッド』と『レインマン』の2作品に“ほんのちょっと”だけ触れます。

『ベスト・キッド』は作中で説明があるため問題ないですが、『レインマン』の方は、「どういう作品か?」だけ知っておかないと発言内容に混乱するかもしれません。

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