作品情報:ザ・ギフト
基本情報
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題名 | ザ・ギフト |
原題 | The Gift |
原作 | – |
監督 | ジョエル・エドガートン |
脚本 | ジョエル・エドガートン |
製作 | ジェイソン・ブラム レベッカ・イェルダム ジョエル・エドガートン |
製作総指揮 | ジャネット・ヴォルトゥルノ=ブリル クーパー・サミュエルソン リュック・エチエンヌ ドナルド・タン デニス・ワン ジェームズ・ワン ロバート・シモンズ アダム・フォーゲルソン オーレン・アヴィヴ |
音楽 | ダニー・ベンジー ソーンダー・ジュリアーンズ |
撮影 | エドゥアルド・グラウ |
編集 | ルーク・ドゥーラン |
配給会社 | ロングライド バップ |
製作会社 | ブラムハウス・プロダクションズ ブルータング・フィルムズ |
製作国 | アメリカ合衆国 |
公開日 | 2016年10月28日 |
作品時間 | 107分 |
出演者 | ジェイソン・ベイトマン レベッカ・ホール ジョエル・エドガートン アリソン・トルマン ティム・グリフィン ビジー・フィリップス アダム・ラザール=ホワイト ボー・ナップ ウェンデル・ピアース ミラー・ファウルクス ナッシュ・エドガートン デビッド・デンマン ケイティ・アセルトン デヴィッド・ジョセフ・クレイグ スーザン・メイ・プラット P.J.バーン フェリシティ・プライス メリンダ・アレン ステイシー・ベンダー ベス・クルーデレ ダレン・P・レイス ローラ・ドレイク・マンチーニ ジョーティ・ヴェンカテッシュ |
あらすじ
セキュリティ会社に勤める夫・サイモンと共に、新居に引っ越してきた妻・ロビン。
ある日、サイモンの高校時代の同級生・ゴードンと出合う。
サイモンとロビンに対して、ゴードンは「ギフト(贈り物)」を何度も送ってくる。その真意とは……。
感想と考察:ザ・ギフト
感想
※ゴードン・モーズリーが本名。ゴードが愛称(ニックネーム)ですが、本記事では「ゴードン」で統一しています※
濃厚。濃密。
リベンジムービーのあるべき姿を示された作品。
復讐の本質は、海外ホラーにありがちな「相手を殺す事」じゃない。
<トラウマ><疑念>を植え付けて、<心>を陥れること。
本作は、そんな部分をきっちりと描写しているのが好印象!
演技なんて良く知らないけれど、冒頭25分あたり。
ゴードンが犬を連れてきたときのロビン――。ここでロビンは、ずっと腕を組んでいる。
相手(ゴードン)と自分(ロビン)の間に壁を作っているのよね。
サイモンに聞かされたことで、ゴードンに対して疑念を抱いていたことが心理的に表れたことを描写しているの……。
こういう細かい表現であったり、重要なシーンをあえてセリフ無しにしていたり、刺さる演出が多い。
作中の「ブキミなゴードン」とは言いえて妙で、初登場シーンのゴードンは確かに挙動不審だった。
前情報を一切なしで見ると、冒頭の時点で「ゴードンがサイモン・ロビンに対して“何か”する=この正体が“ギフト”」と予想できる。
そして、その受け取り方そのままのストーリーなんだけれど、それを「そのまま」見せないのが本作の魅力!
この監督さん、脚本さんは「スゲー」と思ったら、まさかのゴードンを演じているジョエル・エドガートンさんが「監督・脚本・制作」を担当されている!
もう一つ付け加えると、長編映画では初監督作品らしい……。
「スゲー」どころか感動して言葉失うわ。
最初は最初のお店の店員さんも怪しいな。と思ったのよ。
ゴードン初登場で意識をそっちにもっていくことで、店員を意識から遠ざける。
その割には、店員さんの風貌が強烈だったから、彼が住所を教えている(ゴードンと組んでいる)と思ったんだけど、そうじゃなかったみたいね。
じゃあ、どうやって住所を手に入れたの? った話だけど、悪役的位置のキャラクターは「全てを理解できない」ように作ってあるので気にしないようにしましょう。
店員さん以外にも、ゴードンが使ってた家の持ち主とか、キャラクター濃い人が多い。
その辺を注目して観てみると面白いよね!
隣の家の奥さんもね、親身になって良い人よ……。
最初は「ブキミ」「不思議」「変人」という印象だったゴードンが、ストーリーが進むにつれて“その真実”が明かされていく。
それと同時に“サイモン”の人間性が明るみに出てくるのが素晴らしい。
気に入っているのは以下のセリフ。
君が過去を忘れても 過去は君を忘れない
引用元:ザ・ギフト
これは、日本語で言えば「因果応報」という意味合い。
でも、その言い回し・表現がグッと刺さるよね! 一度は使ってみたい言葉にランクインする。(←中二病!)
これ以上感想をを書こうとすると話のネタバレになってしまうので、あとは考察でまとめます。
考察
ゴードンが左耳にピアスをつけている理由
今は知らないけれど、昔のアメリカでは「右耳にだけピアスをする=ゲイ」という印象があったのです。
作中で、「ゴードンがゲイだ!」という話が出ますが「自分(ゴードン)はゲイじゃない!」という視聴者に向けたメッセージとして、左耳のピアスを付けているのでしょう。
他の登場人物はピアスをしていませんし、ゴードンもピアスが無くても成立する役柄ですから、メッセージ性やキャラクターの印象を示す一因と考えるのが自然ですね。
ゴードンは良い奴なのか? 悪い奴なのか?
そもそも、変人なのかもしれない。
それは、気が狂っているという意味じゃなくて、人付き合いが苦手で“変わってる”という感じ。
そんな彼の性根はとても優しくて良い奴なんだと考えました。
誘拐未遂に除隊からの矯正施設の真偽は分からない。
実際に、そういう犯罪思考なのかもしれないし、勘違いや虚偽の可能性も否めない。
じゃあ、なぜ良い奴? と考えたかと言うと、復讐しようと思えばチャンスは何度もあったと思うのね。
「サイモンが戻ってくる」まで待たなくても、手は下せたと思うの。
それに、サイモンと親友だったグレッグ・ピアソンは、ネットで名前調べれば見つかるレベル……。
「そこに復讐しない」という事は、心から「過去を忘れる(水に流す)」という想いで生活していたんじゃないかな。
「ブキミなゴードン」の文字を見て、<サイモンの今>を知り、過去を水に流したり反省したりするどころか、今でも自分を蔑んでいることを知った。
そこでゴードンの復讐心に火が付いて、偽の家に招き盗聴器で録音した。
それは自身の職を失うことになっても。
ロビンが産んだのは誰の子供か?
誰の子供か? って本作では、あまり重要じゃないと思うのね。
どちらかと言うと、「レイプされたか? されてないか?」って話がポイントであり、この考察の焦点。
ただ、その直接的な表現を見出しや目次に載るのを避けるため別表現をしました。
自分の中でも結論が出ないのよね。
1つ目の考えは、映画のストーリーとして美しいと感じる「嘘によって破綻されるサイモン」のエンディング。
だから、ゴードンは昏睡状態のロビンに対してレイプはしていない。だから、生まれてきた子は「サイモンの子」。
サイモンに対しては、「俺はロビンをレイプした」「あれは俺(ゴードン)の子供かもしれないぜ」と“嘘を吹き込んで”で、人生を壊すという考え。
「サイモンの嘘によって人生を壊されたゴードン」の因果応報で「ゴードンの嘘によって人生を破壊されたサイモン」となり、綺麗に収まるのです。
でも、盗撮・盗聴、薬を混ぜて昏睡状態にするなどの直接的な行動と、<覚悟>を見せたゴードン。
それに「The Gift(ザ・ギフト)」というタイトルね。
商業的戦略から「Weirdo(ブキミ)」というタイトルを「The Gift」に変更したんだけど、そうなるとエンディングも違った見方が出来るのよね。
ここから2つ目の考え方。
2つ目の考えは、ギフト=子供という考え方。
この考えに至る流れなんだけれど、冒頭50分のロビンが昏睡状態になるシーン。
ここから暗転して場面転換する時に、シーンとは何の関係もないヘリコプターの音が挿入されているの。
そこで、作中で何度か出てくる「地獄の黙示録(映画タイトル)」がキーになる。
地獄の黙示録で「ヘリコプターの音(からのワルキューレの騎行)」と言えば、<殺戮の合図>なんだよね。
という事は、この時点でゴードンはロビンをレイプしたと考える方が自然なの。
このヘリコプターの音って、「他人の家で盗聴した時(復讐を決めた直後)」「出産祝いのDVDの最初(疑念を植え付ける復讐)」「ラストシーンでの電話の最初(疑念を深める復讐)」のように、<復讐の合図>という演出になっている。
ということは、暗転して場面転換するところ。
本来なら無くても成立する。
むしろ、なぜ「ヘリコプターの音?」となると――。
このタイミングでレイプしたという発想に至るのよね。
これを裏付ける要因として、サイモンが謝罪に行ったシーンでの「もう手遅れだ」ってゴードンのセリフ。
もしも、レイプをしていないのならば、出産祝いのDVDを送らず、電話もしなければ「手遅れ」では無かったんだよ。
あの時、サイモンが真摯に向き合って、心の底からゴードンに謝罪すれば、復縁の可能性が僅かながらに残っていたかもしれない。
でも、「手遅れ」という表現。
既にコトが終わっている――という事は、やはりレイプしたと考えるのが自然に思えるのよね。
そして、生まれてきた子は「ゴードンの子」。
子供を望んでいた“ロビン”にとって、最高の贈り物(ザ・ギフト)でしょ――ってね?
英語メモ
Weirdo
ホワイトボードに書かれた言葉。意味は「ブキミ」。
今のタイトル「The Gift」に改題される前の原題が「Weirdo」だった。
LOST DOG
ポスターの言葉。意味は「迷い犬」。
ALPRAZOLAM
薬の入れ物に書いてあった言葉。意味は「精神安定剤」。
直訳だと「アルプラゾラム」であり、精神疾患で処方される代表的な薬。
let bygones be bygones –
手紙の一節。意味は「過去のことは水に流そうと~」。
結び
『マー -サイコパスの狂気の地下室-』とは違ったリベンジスリラー。
次はもっと明るい作品観たい! と思いつつ、スリラー作品は考察が楽しいからやめられないなぁ。