『限界団地』は怖いけどラストが好きになれない

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作品情報:限界団地

基本情報

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題名限界団地
原題
原作
プロデューサー遠山圭介(東海テレビ)
高橋史典(ケイファクトリー)
馬場三輝(ケイファクトリー)
企画横田誠(東海テレビ)
脚本香坂隆史
演出湯浅典子
千葉行利
高橋貴司
爲川裕之
製作ケイファクトリー
音楽田渕夏海
中村巴奈重
櫻井美希
主題歌majiko/ひび割れた世界
製作会社東海テレビ
製作国日本
公開年2018年
話数全8話
出演者佐野史郎
寺内勇貴
福崎那由他
渡邊詩
山谷初男
足立梨花
迫田孝也
前田虎徹
山崎樹範
江波杏子
太田緑ロランス
阿南敦子
伊藤正之
川添野愛
鈴樹志保
古川がん
仲野元子
朝加真由美
郭智博
森恵美
岡田優
小松政夫
柴田義之
福田ゆみ
藍田愛
春木みさよ
和田琢磨
吉川逞来
岩戸秀年
西野優希
坂本文子

橘杏
兒玉宣勝
久世理瀬
佐々木征史
松浦理仁
遠藤壮馬
鈴木省吾
松本海希
春延朋也
松下美優
安本健
いしはらだいすけ
二宮郁
古川慎
石田尚巳
春海四方
伊藤愛理
加藤櫻華
本多陽登
柳下晃河

あらすじ

限界団地とは、住民の半数以上が高齢者の「高齢化が進んだ団地」を指す言葉。
そんな「限界団地」を舞台に、団地を守るスーパーヒーローを自称した主人公・寺内。

現代の希薄になったご近所付き合い・人間関係を大事にする“世話焼きのお爺さん”に見える寺内であったが、そこには隠された過去があって……。

感想:限界団地

感想

主人公・寺内を演じるのが佐野史郎さん。
期待するなという方が無理でしょう。
どうしても期待してしまうし、ゆうゆうとその期待を超えてくる!

ドアノブカバーを紙袋いっぱいに持っていた序盤のシーンから、“気味悪い”という感じがジンジンと伝わってくるわけです。
この時は、「ドアノブカバーの中に盗聴器仕込んでる?」と思ったけど、本作の後の方で盗聴器の入手ルートをある人物に質問するシーンがあったので、ここでのドアノブカバーに他意は無いんですよね。
「おせっかいを焼くのが好きな孫思いのおじいちゃん」と言う第一印象が、ストーリーが進むにつれて本性が明かされていきます。

団地に住んだことが無いので、団地の好き/嫌いが分からない。
今はアパート暮らしですが、同じ建物に住んでる人の顔って数人しか知らないのよ。(ごみ捨ての時間被らないと会わないの。)
なのに、主人公・寺内は数棟ある住人の顔と名前を一致して覚えるって、そういう点も狂人だわ。

本作で<<一番怖いシーン>>は下記かな。

「調味料貸してください」
「お裾分けします」
「手作りのアップルパイ」

自分なら受け取らないし、受け取っても絶対に食べない。
まったく知らない、あるいは顔見知り程度の人から物貰うことは絶対拒否するし、「関係性が微妙な人」から頂くお土産とかも苦手。
潔癖とかじゃなくて、お店(生産者/販売者)と自分の間に“想定外の何か”が介入するのが気持ち悪い。
(とか言ってると、一番最初に殺されかねないわ。)

もっと、怖いシーンがあるだろ! と言う意見もあるでしょう。
(○○さんが襲われるシーンとか、過去が明かされるシーンとか)

しかし、本作は「大人の土ドラ」に属する作品です。
人など死んで当たり前。
テレビ放送基準である時点でゴア表現も期待できないというベースラインがあるので、人が死ぬ・団地の関係者などが襲われることは想定の範囲内。そこは怖くないの……。

しかし、他作品より頭一つ抜けているのが“音”ですかね。
ジャンプスケア(大きい音でビックリさせる)って意味合いじゃなくて、どこかASMRを彷彿とさせるような、吐息や足音の雰囲気づくりと臨場感が良かったです。

ここからラストシーンのネタバレを含みます。

感想(ネタバレ注意)

あのエンディングは微妙でした。
大人の土ドラ」だから、もっとぶっ飛んだエンディングを期待してしまった。

足立梨花さん演じる桜井江理子が狂うエンディングは想定の範囲内。
(むしろ、この形を予想した人が多いと思いますし、驚きもしませんよね……。)
意外だったのは、主人公・寺内が逮捕されるという点でした。

寺内の理念として、「孫の穂乃花ちゃんが大事(依存している)」「あやめ町団地が大事(こちらも依存・執着)」でした。だからこそ、本作の開始時点では両親を殺害した上で「穂乃花ちゃんだけ助ける」となっていますが、本作のエンディングでは、「穂乃花と会う事をあきらめる」という選択をしています。
また、刑務所の中にミシンを持ち込んでいるという状況や、刑務所の中でも回覧板を回すという一連の結末演出が、団地への執着や限界団地というタイトル自体に繋がりがありません。

これが非常に中途半端で、ブレているように感じてしまう。

江理子をストーキングして、穂乃花の場所を探し出して江理子と颯斗を殺害するとかでも良かったと思う。
「次はどこの団地へ行くのか……。」でエンディングの方が、まだよかった。

そうしないのであれば、穂乃花は1年前に殺害しておけばよかったと思うし、小松政夫さん演じる与田さんのように「親からの虐待から“死をもって穂乃花を救う”という選択肢」を選んでも良かったと思うし……。

もっとぶっ飛んでほしいと書いたのは、「江理子は洗脳されていなかったが、穂乃花が洗脳されていた」というラストだったら、良かったと思う。

寺内が逮捕されて、そのまま穂乃花と会えなくなった。
江理子は献身的に穂乃花を支えて、十年以上経過。
大人になった穂乃花が、祖父・寺内の意思を継ぐ(ように匂わせて)エンディングを期待していました。

結び

高齢者というと失礼だけど、「おじいちゃん」と呼ばれる人が「狂人」を演じる作品ってあまり見かけない気がする。よくある中年男性みたいなのじゃなくて、少し変わった設定の「狂ってる作品」が観てみたいなぁ。

願わくば、良い方向に期待を裏切ってくれる「もっとぶっ飛んだ作品」を観たい。

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