作品情報:人狼ゲーム
基本情報
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題名 | 人狼ゲーム |
原題 | – |
原作 | 人狼ゲーム/川上亮 |
監督 | 熊坂出 |
脚本 | 夏野みや子 川上亮 熊坂出 |
製作 | 永森裕二 種子島幸 江副純夫 古川為茂 倉田康宏 小野寺廉 |
製作総指揮 | 吉田尚剛 |
音楽 | スパン子 |
撮影 | 松井宏樹 |
配給会社 | AMGエンタテインメント |
製作会社 | スタジオブルー |
製作国 | 日本 |
公開日 | 2013年10月26日 |
作品時間 | 110分 |
出演者 | 桜庭ななみ 太賀 竹富聖花 岡山天音 大沢ひかる 梶原ひかり 藤原薫 平埜生成 入江甚儀 藤井美菜 大原由暉 鹿野智哉 照井啓能 後藤光平 中平迅 水町大騎 棟近昇太 村上崇行 伊藤結衣 金子聖美 平田絢香 |
あらすじ
高校生男女10人。
建物内で命を懸けた人狼ゲームをすることになった。
10人の中に人狼は2人。主人公は村人だった……。
感想と考察:人狼ゲーム
感想
ひどい。
ごめんね。私はあまり「ひどい」って言わないようにしてるんだけど、これはひどいよ。
「原作未読で映画だけ観て“ひどくない”」と言える人は、キャスティングの中で好きな人がいるくらいじゃないかな?
※私は原作未読ですので、先入観などなく映画のみの感想となります。
今考えると、このキャスティングは凄い。
だけど、キャスティングに好きな人がいたとしても、この作品は擁護できないと思うよ。
まずは映画が始まってすぐね。
いきなり「蜘蛛」の映像が出て不愉快。
そこから場面転換したスマホシーンでは無音。
そして、もう一度「蜘蛛」です。
もうね、第一印象は悪いですよ。
この蜘蛛についてエンディングで多少触れるだけで、あえて大きく描写する必要性を感じないし、「この映像シーン」から何を感じ取ればいいのか理解できない。
「1人目(友人)が死んで冗談ではない」「役柄カードを見たらルール違反で死亡」の2つの時点で、自分のカードを全員に見せることで、周りをルール違反者として死んでもらう事で村人もろとも人狼排除して勝利――。
例えば、1人目が死んだあと全員議論している場。
あそこで、「こんなものを見つけたの。」と言って自分の役柄カードを机の上に置いて、全員に見せつけたらゲーム終了。自分以外は全員死んで終わり。はい、完全勝利!
と思ったけど、そういう展開にはならない。
人狼ゲームを「映画における命がけのゲーム」に昇華させる上で考慮が足りていないように感じる。
命が掛かった以上はルールの盲点などを付くというのはあって然るべき展開なのに、その思考をしないのは何故か?
こういう部分の補足的設定や演出が無いと視聴者は納得しないです。
1人目の犠牲者が出たところで分かるとおり、建物を出た1歩目で死亡(センサー等)なら分かるんだけど、建物を出ていないのに死亡した時点(参加拒否の意思を表して出る寸前)で遠隔で誰かが監視していることが分かる。
これはきっと黒幕が手を下したのだろう……と予想したのに、黒幕をぼやかして終わるというエンディング。
なんだそれ。
そんな適当に投げたエンディングなら、考察するのバカみたいじゃん。
それに本作はBGMが全然ない。
そのせいで演技を支える緊迫感が無くて、学芸会みたいに感じる。
映画における「BGM(音楽)」がいかに重要か? ということを思い知らされた一作になりました。
日本の作品だからゴア表現を期待していた訳じゃない。
だから、本作で魅せるべきはストーリー。
にもかかわらず、伏線にもならない無駄が多いのよ。
主人公が受動的であるのは特徴の1つとして良いんだけど、ここまで行くと気持ち悪いし、なぜここまで擁護されるのかも理解できない。
それに音楽が無いせいか、関係値が変化するだけのシーンを見せられるのは退屈がすぎる。
だから、「もう誰が人狼でもよくね?」となる。
それでも、どんでん返しを期待して考察しながら観ることにしました。
以下、冒頭1時間の時点で感じたことです。
預言者が2名出てきた。
この時点で、どちらかが人狼だろう。
このパニックの後、やたら絡んでくる井上真理絵は人狼確定。
あの状況下ならば、対立した預言者はおそらく白と言えるだろう。
更に言えば、井上真理絵が“人狼”と断言した人間は“村人”と考えて良いだろう。
そのことから、もう一人の人狼は「主人公に寄り添っている多田」か「井上真理絵の妹・このみ」のどちらかと言える。
「多田」と「このみ」は毎回同じ人を指しているから、この2人を判断する材料は無いと言える。
本作はゲームではなく、あくまで映画であるためメタ的なことも踏まえて考えてみると、「人狼だけど妹を守る」「妹を裏切って身内殺しをする」のどちらに転んでも、「このみが村人の方がストーリー上、都合が良いだろう」という事を踏まえて、多田が人狼。
井上真理絵が預言方法を知っていた理由は、恐らくこの人狼ゲームが1回目じゃなかったってことだろう。作中の「旅行に行ってた」って話が、この人狼ゲームに参加させられた(あるいは自ら参加した)ってことになる。
主人公からすれば、本作は1回戦だった。
真理絵からすれば、本作は2回戦だった――と、こういう事だろう。
と、ここまでが私が1時間時点で考察した内容。
実際に映画を観てもらえれば分かると思うが、そこからエンディングまでの残り50分。
私が退屈したのは言うまでもない。
ゴア表現も期待できません。BGMもありません。ストーリーも展開が読めます。
私は本作を観て、何を楽しめば良いのでしょうか??
ちなみに、私は人狼ゲームをやったことは無いです。
そもそも、人狼ゲームに詳しくないため、定石とかも知らない訳です。
私は、本作が“ひどい”と表現しましたが、人狼ゲームを実際にプレイしたことがある人からすれば面白いのかもしれません。
それは是非、自分の目で確かめて欲しいです。
(普段から考察するような人で、ちゃんと本作を観た上で“面白い”って意見を出す人が居たら、その人の意見を聞いてみたいかも。)
考察
なぜ映画を“ひどい”と感じたのか
私の中で理由は3つあります。
- 1つ目が音楽。
本作はBGMが一切ありません。
環境音などはあるのですが、画面を盛り上げたり心情を強調したりと言った演出するための音楽が無いのです。
これは「リアリティがある」という言葉で片付けることはできず、むしろ「手を抜いている」と感じてしまったのが原因の1つでしょう。
- 2つ目が演出。
「ゴア表現」「シチュエーションホラー」を期待したにしても、「命を懸けた人狼ゲームそのもの」を期待したにしても期待外れになるような演出だと感じました。
「無音・静音→コロサナキャ→パニック→ワーキャー→無音・静音」のループ。
メリハリって印象なら良いんだけど、なんか雑な印象を受けたの。
前述のとおり、音楽が無いから「主人公をはじめとする心の変化」も分かりづらくて、なんでこのタイミングでこういう行動取るの? と疑問に思うことは多いでしょう。
それはストーリーを面白くするための不可解な行動ではなくて、ストーリーのノイズのように邪魔でしかないから“ひどい”と感じるのかもしれない。
人狼ゲームなのに、ほとんど議論しません。
殺すところは、ほとんど描写しません。
えーっと、どこに面白味を見出せばいいの?
- 3つ目がストーリー。
ストーリーの「展開」は悪くないと思う。
冒頭1時間(半分過ぎたあたり)で人狼が誰か? や、どういうエンディングを迎えるか? は読めるんだけど、それはそれで上手くストーリーがまとまっていると感じました。
一方で、導入の「蜘蛛、子供」からのエンディングの「犯人は大人だよ! 子供かも!」や、ただただ登場人物の関係値が変化するだけのシーンなど「伏線とも呼べない描写」が多数ある。
それを支える音楽が無いのも相まって、印象が良くない。
何より「本作は“人狼ゲーム”じゃなくても成立する」というのが最大のポイント。
原作未読のため、原作がどのように展開しているのか分からないけれど、「あそこまで議論もしません。ことあるごとにパニックを起こします。かと思えば、パニックを起こしてた人が冷静に判断します」というグチャグチャの状況なら、“人狼ゲーム”じゃなくて良いと思った。
あくまで、“人狼ゲーム”を冠にするのであれば、ドラマ『LIAR GAME』のように「疑心暗鬼」をテーマにしたストーリーであるべきというのが私の意見。
だってさ、冷静に考えてみて欲しいの。
本作のシナリオ・演出を前提にしたら『人狼ゲーム』じゃなくても成立するよね?
ちょっとしたメモ
KCN
シアン化カリウムの化学式。別名の「青酸カリ」でおなじみ。
カメラアイ
瞬間記憶能力のこと。しかも、覚えたことを忘れない能力を指す。
結び
「人狼ゲーム」を客寄せワードにしているだけで、中身が伴っていない映画という印象。
原作はベストセラーらしいので、面白いのかもしれない。
けれど、本作の映画を観たら「原作を読んでみよう!」とはならんよ。
シリーズものですが、次作を観るかも微妙なところです。