『スクール・アローン』パクリじゃない! 邦題によるミスリードだ

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作品情報:スクール・アローン

基本情報

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題名スクール・アローン
原題Christmas Break-In
原作
監督マイケル・カンパ
脚本スパンキー・ダスティン・ウォード
製作タマラ・ベル
ロン・ブロウ
ギル・アグロール
エリザベス・スノダリー
スターラ・クリスチャン
ターニャ・シルバー
製作総指揮アリ・マヒル・アクス
ジョセフ・ゲーラ
音楽J・ベイトマン
撮影カイル・モー
編集マシュー・ファクレル
配給会社Koan
トランスワールドアソシエイツ
製作会社Koan
G It’s Entertainment
製作国アメリカ合衆国
公開日2018年
作品時間86分
出演者ダニー・グローバー
デニス・リチャーズ
キャメロン・シーリー
ショーン・オブライエン
カトリーナ・ビギン
ジェイク・ヴァン・ワゴナー
ダグラス・スペイン
ドーソン・エルケ
ジェット・ザ・ドッグ
レキシ・ジョバニョーリ
パトリシア・ホリー
デイビス・スタルター
ジェームズ・ロバート・ミラー
メイベル・ワイズマン
ナオミ・ウィッタッカー=ヒル
ダニエル・ウンティード
ケイティ・ベア
ジェイデン・モガカ
リア・アンダーソン
ショーン・ダンバー
マリア・クレール
ケイシー・E・ルイス

あらすじ

クリスマスが近づきギターを両親にねだる9歳の少女・イジーが主人公。

ギターを買いに行く日、両親は仕事で約束を忘れてしまい、イジーは学校で一人ぼっちになるのだった。
そんな時、強盗3人組が学校に侵入して……。

感想と考察:スクール・アローン

感想

ホーム・アローン』の続編? それともパクリ!? と見始めた人が多いのではないでしょうか?
今まで家(ホテル)が舞台だったあの『ホーム・アローン』が、ついに学校が舞台になったのか? と……。

はい、私もその一人です。
だって、つい先週まで『ホーム・アローン』を観て、ブログ書いてたんだもの。

先に結論から言うと、一切関係ないです。
そもそも、パクリじゃないです。はい。

映画の最初に原題がちゃんと映るのよ。
原題は『Christmas Break-In』、直訳すれば『クリスマス強盗』です。
これが『SCHOOL ALONE』だったら、度を超えた「パクリ」って主張も分かるんだけど、そうじゃないからね~。

それを、邦題で『スクール・アローン』と名付けた配給会社? の完全なミスリード。
先入観を持つな! という方が難しいし、それを前提とした評価になるのは至極当然。

A級タイトルに似たタイトルで釣るというのは山ほどあるし、そこにトヤカク言うつもりはないけれど、ハードルが上がった分、本作は残念な印象が強い。
U-NEXTの画像からも、そこまでB~C級感が漂っていないのも、一つ引っ掛けになっている。

ただ、本作を観て『ホーム・アローン』と雰囲気が似てる全然思ったのと違う! という感想なら分かる。
しかし、ホーム・アローン』のパクリだと感じたならば、ちゃんと『ホーム・アローン』を観た方がいいぜ! と言うのが個人的な感想……。

さて、オマージュ作品だとは思うんだけど、本作で描きたいことって家族愛に特化していないのよね。

もっと、別の繋がりや非日常的な要素。
そこには職業も年齢も関係ない繋がりがあったり、働き詰めで約束を忘れる両親に感じる孤独だったり、そんな日常に対して「強盗(侵入者)」という非日常の刺激が加わったクリスマス。

と擁護しようとしたけど、そこまで盛り上がることなくエンディングを迎えました。
ドタバタコメディまで振り切っていないから、そこに期待するのは止めた方がいいかもです。
じゃあ、ストーリーが深いのか? というと、う~ん。

主人公は9歳の少女・イジーなのですが、自己紹介と設定肉付けが終わったら、ストーリーの担い手は強盗3人組を主軸を移っていきます。
そして、ここから(ここまでも)視点のスイッチが多い。
それのせいで、ストーリーが薄っぺらくなっているのよ。

ホーム・アローン』では、多くのケースで「家族は一緒にいる/主人公だけ置き去り」でしたが、本作では「みんなバラバラの場所/主人公もそのバラバラの1つ」という位置づけ。それに加えて、用務員に強盗3人組を切り替えつつストーリーを展開するんですから、薄っぺらくて当然よね。

主人公の設定も「ギターが好きな女の子」「9歳だから馬鹿にしないで」しかなくて、「は?」となる気もする。
この「ギター」がエンディングのためだけの伏線なのだから、

褒めるべき点で言えば、やっぱり音楽は力入っているように感じる。
特に、ギターギターギターギターとしつこいくらい主張しているだけあって、ギターアレンジされたクリスマスソングは、カッコよかった!
ここにもっと時間割けばいいのに! と強く感じましたよ。

誰かが言いそうだけど、「アローン(一人)じゃない!」という話をすると、『ホーム・アローン』も一人でいないことがありますし、本作でのイジーは映像に移らない部分で「常に孤独」と考えれば、「アローン」という考えも理解できるため、浅い反論をするつもりはないです。
※この邦題を擁護するつもりはないけどね。

吹替版で本作を観たのですが、何名かの吹替がゆっくりしゃべりすぎ。

映像作品を速度変更して観ることはないのですが、「ん? 0.8倍くらいになってる?」と思うくらい遅い。
「音壊れるんじゃない?」ってくらい引き延ばされた印象を受けました。

じゃあ、なんでこんな作りなんだろう? と考えたのは、下の考察でまとめておきましょう。

まぁ、この手のストーリーなので、ハッピーエンドで終わるのも予想どおり。
なんなら、あの展開も予想できたよね……。

エンディングでは、NGシーンを流してくれるのは嬉しい。
ここは吹替え版でも字幕になるため注意が必要ですよ。

それで、このNGシーンのセリフで分かったんだけど用務員・レイを演じるのがダニー・グローバーさんだった。
『リーサル・ウエポン』と言えば、誰しもが耳にしたことがあるでしょう。
でも、私の中では『プレデター2』の主人公の人よ!

あ~、お互いに歳をとりましたなぁ~。

とおセンチな気分になりました。

考察

吹替版でゆっくりしゃべる理由

「子供向け」であることを意識しているためと考えました。

この映画を見て、ゆっくりすぎる喋り以外に感じた違和感として、一部キャラクターが名札を付けていることが挙げられます。
用務員・レイや、トラック運転手・クリス、強盗・ネッド……。
ネッドについては作中で触れているけれど、その他のキャラクターは明らかに違和感がある。
名札を付けることで、作品を分かりやすくしているのでしょう。

「強盗をやっつけるシーン」でも、過激な表現ではありません。
幽霊で脅かすシーンではジャンプスケアも使っていないですし、ストーリー自体も子供向けと考えれば理解できます。

だとしたら、視点・場面をコロコロ切り替えすぎているし、この考察は自分でも納得していない!

むしろ、吹替工程にトラブルがあって、映像と音声を無理やり合わせたためにゆっくり喋るといった方が理解が出来る。
例えば、吹替台本の文字数と登場人物の喋る時間がマッチしてなくて、ゆっくり喋らざるを得なかった……とかね?
真実は知らないですが、こっちの方が納得できるわ!

ギターに固執するのは何故だろう?

全然、分からない……。

メタ的な考えて、監督や脚本家の趣向だと思って調べてみたけれど分からなかった。

では、作中に目を向けて、「両親が共働きで、約束を忘れるほどに働き詰めの状況」であったとしても、子供の趣味「ギター」にお金をかけるほどの余裕はない世の中を憂いた風刺的表現かもしれない。(アメリカの経済事情は知らんけどさ。)
本作は、そこまで小難しい話じゃないと思うのよね。

だとすると、前述に書いた「子供向け」を意識していることから、「子供が望むものは、そう簡単には手に入らないんだよ」という教育的表現の1つとして、「ギター」を誇張したという考え。
アメリカの子供が何を望むか分からないし、一般的なレベルが分からないけれど、例えば「スマートフォン」や「パッド」というものが標準的に子供に与える文化だと仮定すると、そういうものをねだるという表現は適切ではない。
かといって、テレビゲームやスポーツ用品となると上限などたかが知れている。
そこから、値段がピンキリであり「値段がとても高い物(もある)」という共通認識を持つことが可能な、「ギター」を印象付けた可能性がありますね。

もう1つの要素として、言葉としての「GLORIA(グロリア)」に拘った可能性があります。
GLORIA(グロリア)の意味は「光栄、偉業、功績」。
用務員・レイは、「私を助けてくれてありがとう」という功績を讃えて、あのエンディングに繋げるため「ギター」を印象付けたと推測しました。

注意:「GLORIA(グロリア)」というギターが実際に存在するのか――私は知らないです。

トラック運転手・クリスの正体は?

ノーススター運送の運転手であるクリス。
運送会社だから、猛吹雪でもトラックを運転している点は理解できる。

ただ、ちょくちょく引っかかるセリフがある。
一番気になるのは、やっぱり終盤のトラック激突からの電話シーン。

「アイスクリーム店の車」「クリスマス袋を持っている」だけでは、強盗と断定するには弱いでしょう。
持ち出された中身までクリスは理解していた。
更に言えば、電話をかけた相手は警察ではないですし、この電話のやり取りが「取り返した」かのような表現をされているのが引っかかる。
(これは吹替え版でも字幕版でも同様の表現になっている。)

「用務員・レイ」と「運転手・クリス」が裏で繋がっているとも考えたんだけど、そこまで深く練られた脚本では無さそうなんだよね。
シンプルに考えれば、一番最初の「リサイクル店」のために取り返しに来たと考えるのが自然だろうか。

英語メモ

THRIFT STORE

映画冒頭に出たお店の看板に書かれた文字。字幕表示は「リサイクル店」。
別の意味として、「チャリティーショップ」という意味もあります。
本作はこちらの方が近い気がする。

Christmas Break-In

本作の原題。意味は「クリスマス強盗」。

ホーム・アローン5』のサブタイトルにあった「Heist」も強盗という意味ですが、こちらは暴力を利用せず「こっそり忍び込む」ニュアンスの単語。
本作の「Break-In」は、「暴力的な強盗」というニュアンスの単語。

※他にも強盗を表す言葉がいっぱいあって混乱しますね。

結び

あんまり、オススメはしないかな。

やっぱり、邦題による先入観・ミスリードは大きいよ。

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