『火の粉』はサイコパスじゃない狂人を描く物語

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作品情報:火の粉

基本情報

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題名火の粉
原題火の粉
原作雫井脩介
プロデューサー市野直親(東海テレビ)
高橋史典(ケイファクトリー)
脚本 香坂隆史
高橋悠也
演出 森雅弘
竹村謙太郎
製作東海テレビ放送
音楽兼松衆
大間々昂
主題歌 鈴木雅之/Melancholia
バームクーヘン担当都留沙矢香
製作会社ケイファクトリー
製作国日本
公開年2016年
話数全9話
出演者ユースケ・サンタマリア
優香
中村容子
伊武雅刀
朝加真由美
大倉孝二
庄野凛
星野晶子
大島蓉子
木南晴夏
中野遥斗
佐藤隆太
酒井若菜
迫田孝也
田中允貴
玉置孝匡
川野直輝
今井あずさ
石川雅宗
犬飼若博
柏幸奈
山崎画大
渋江譲二
足立智充
八神ねがお
和泉佑三子

あらすじ

元裁判官の梶間勲一家の隣に引っ越してきたのは、武内真伍だった。
武内は過去に一家惨殺の容疑者であり、梶間は裁判官時代に『無罪判決』を下したという関係だった。

過去に一家惨殺の真犯人は誰だったのか。武内とは一体何者なのか。
そして梶間家では何が起ころうとしているのか――?

感想:火の粉

感想

本作は「オトナの土ドラ」に位置づけられた最初の作品です。

重い。テーマが重い。軽はずみに触れてはいけないテーマ。
これが「オトナの土ドラ」なのか!

という事を踏まえて、作品を観ました。面白かったです!
そして、バームクーヘンが食べたくなりました!
※これからドラマを観る方は、ぜひバームクーヘンを用意しておきましょう!

序盤は、視聴者側への問いかけのようにも思えました。
「殺人容疑をかけられ無罪判決を受けた男」に対する先入観や、マスメディアの在り方に一石を投じるようなストーリーになっています。
(先入観は良くないよね。でも、難しいよね。)

狂気に満ちた本作ですが、ユースケ・サンタマリアさん演じる主人公・武内の「無垢な狂気」がすごかった。

「殺人」を実行に移すハードルが低いんだよね。
長く生きていると、何かの事情で「人を殺したい」ということはあると思います。
でも、そこには法律や倫理観、道徳心をはじめとする「自制心=ハードル」が働くんだよね。
しかし、武内はそうじゃない。
「好意を無碍にされること」が、殺人を越えるほど耐えられない屈辱的行為というだけ――。

「危ない人、狂った人=サイコパス」って考える人が多いけど、サイコパスには定義があるから軽はずみに使うのは控えてほしいのよね。(サイコパスとソシオパスも別だからね。)

武内は「他者への思いやりに溢れているし、恐怖という点も描かれている」ため、サイコパスとは違う位置づけだと思うんだよね。

音楽と演出の雰囲気作りが良かった。
何気ない料理のシーン。
音楽やカメラワークを変えれば、ただの料理番組ですよ。
それを「あそこまで疑心暗鬼を誘う作り」にできるのは脱帽です。

本作は緊張と緩和が“良い意味”できつい。きつい。

特に最終話の「最後の晩餐」シーン。
波のように押しては返す疑心暗鬼――。
食べると死ぬかもしれない緊張感。ヒリつくね~。

佐々木琴音を演じる木南晴夏さんが好きです。
本作に登場した方だけでなく、日本の俳優・女優さんの中でもトップクラスに好きな方。
特に闇落ちした後は、迫真の演技ですよ。

ここから先は、ネタバレになってしまいます。
(どうしても書きたいので、未視聴の方は閲覧注意でお願いします。)

武内は最後に自ら死を選んでしまいました。
少し前のセリフで、「もう疲れた」みたいなところが伏線になっていたんだよね。

毒を入れて作ったバームクーヘンを床にたたきつけた。
新たに作り直したバームクーヘンには毒を入れなかった。
新しく作ったバームクーヘンをもって、梶間一家と「最後の晩餐」。
自宅に戻ってきた後で、最初に作った「毒入りバームクーヘン」を食べて……。

自分自身は、疑うことなく良い人であり、常に他者を思って生きている。
その「他者」のためならば、お金を工面するだけでなく「邪魔な人間」を除くことさえも行ってしまうほどに。
そこまで尽くす武内にとっては、善意(好意)を無碍にされることは、「自分自身を否定されること」と同じだったのかな。

そして、梶間一家と直接的に意見を交わすことや、佐々木琴音が「善意の押し売り」をすることへの違和感から、「自分が社会に受け入れられないことを実感」して、そういう結末を選んだのかな。

大倉孝二さん演じる・梶間俊郎が「武内さんは人を殺さなければ、すごく良い人なんです。」という旨の発言をしているんですよね。本当にこれが全てだと思います。
だからこそ、一言で「狂った人」と片付けてしまうのは違うな~と思ってしまう。

ラストシーンの梶間一家の表情。複雑だよね――。

結び

マンションとかアパートに住んでると、「隣の人が何者か?」なんて知らない人の方が多いんじゃないかな。
少なくとも私は知らないなぁ~。

戸建てだと、やっぱりご近所付き合いってのがあるのかな?
本作ほどじゃないにしても、ママ友とかそういう言葉があるくらいだもんね。

私からすれば、隣が何者だろうが知ったこっちゃないってのが本音です。
そこまで他人に興味がわかないので……。

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