『ナサケの女～国税局査察官～』と国税局隠語

作品情報：ナサケの女～国税局査察官～

基本情報

あらすじ

国税局の査察部を舞台としたテレビドラマ。

西伊豆税務署に所属する主人公・松平松子が、実績を認められて本部（国税局）勤務となるところから話が始まる。
一話完結構成で各話ごとに現れる脱税容疑者を追い詰めていく勧善懲悪ストーリー。

感想：ナサケの女～国税局査察官～

感想

税金という重いテーマを扱いながら、コミカルに演出されていました。
さらに一話完結で勧善懲悪の時代劇的な構成であるため、話が分かりやすいです。
最後に罪状やら罰金やらの情報をドンッと見せてくれるのも嬉しい。
（脱税は執行猶予ってつかないのかな？　と思いましたが調べていません……。）

オネエ役として武田鉄矢さんがキャスティングされており、よくこういう役柄を引き受けたな～と思いきや、もともとの脚本に存在していなかったけれど、武田鉄矢さんから打診して「オネエ」というキャラ付けをしたらしく、驚きです。
（こういうキャラクターがいた方がドラマがおもしろくなる。 という理由も素敵！）

警察の家宅捜索みたく、国税局の“強制調査”は強力ですね――。
ドラマ上、捜査先には長い期間の内偵調査を踏まえて「ほぼ黒」となった上で強制捜査に踏み切っているのが描かれていますが、「もしも白」ならば仕事は止まるは、家や職場をメチャメチャに荒らされるはたまったものではないですね……。
第１話で店側に脱税容疑がかかっているにも関わらず、各ホストの家まで調査対象になっているのはビックリでした。
（ぬいぐるみの中の綿を掻き出したり、冷凍庫に入ったものを解凍したり国家権力怖いのよ。）

出演者のキャラクターなどを引き立てるためか、ストーリーは少し見劣りします。
犬養先輩の妊娠伏線や、友也などの切り捨て扱いなども何とも形容しがたい残念さが残ってしまいました。
一方で、キャラクターは素晴らしいため8話短い！　もっと見たい！　となるような出来になっています。

税金というテーマから国民に向けてのメッセージ性が強い反面で、税金が適切に使われないことへの嘆きみたいなものも含まれているのが、皮肉めいていて面白いものです。

連続ドラマの８作では、きっちりと勧善懲悪としつつも“お金”で解決できるという闇の部分を残しています。
クリアに終わろうと、橋爪功さん演じる花形啓介にセリフを言わせるも、そこまでの流れは完全に“お金の力”であるということも、きっちり表現しています。

スペシャル版では、国税局側も見抜けない脱税が存在するという別の闇の部分を表現しています。
伊東四朗さんが演じる万城野権蔵に対して罰が下されたのに対して、速水もこみちさん演じる万城野駿（＋島民）が見落とされていますからね。

強いメッセージ性を押し付けるわけじゃない演出とキャラクターが見どころですね。
また、本人役としてマツコ・デラックスさんを出演させている点も好ポイントでした！

豆知識

国税局の立ち位置は？

「内閣＞財務省＞国税庁＞国税局」です。
ちなみに、警視庁（東京都警の位置付け）は、「内閣＞内閣府＞国家公安委員会＞警察庁＞警視庁」となっています。

税務署が税金に関する業務を取り扱うのに対して、国税局は「税務署の管理」や「税務署で対応できない税務調査」を実施しています。本作で描かれている部分は、「税務調査」に特化していますね。

国税局隠語：ナサケ

「国税局　査察部」の中の情報部門（内偵班）を指す言葉。
米倉涼子さんが演じる本作の主人公・松平松子が所属していたチームです。

国税局隠語：ミノリ

「国税局　査察部」の中の実施部門（捜索班）を指す言葉。
勝村政信さんが演じる日野敏八や、飯島直子さんが演じる犬養一美が所属していたチームです。

国税局隠語：タマリ

脱税して隠している資産を指す言葉。
作中でミノリが強制調査にて探していた現金などが該当します。

国税局隠語：嫁入り

内偵調査から強制調査に移行することを指す言葉。
柳葉敏郎さん演じる・イチバンこと新田進次郎が会議室にメンバを集めていたあのシーンのことですね。

結び

マルサの女だっけ？　ナサケの女だっけ？
→マルサの女は伊丹十三監督の映画。
本作はナサケの女。マルサの女に影響を受けていると思われます（多分）。

イチバンやニバンは隠語なの？　それとも、本作中の独自のあだ名なの？
→結局、分からないまま。

などなど、ストーリーなどの作中以外のことに気を取られてしまいますが、楽しめました。